【同盛祥】羊肉泡[食莫]

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無発酵パンの羊肉スープがけ
羊肉泡[食莫](yang2rou4 pao4mo2)
P1110751.jpg P1110752.jpg
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【データ】とき:9月10日/ところ:西安鐘鼓楼広場・同盛祥/ねだん:?元(ごちそうしていただいたので)

9月10日から18日まで、ロード出張に出ていた。
西安、福州、瀋陽を周遊する9日間の長旅だ。

最初の出張先は、西安。
西安と言えば、なんと言っても羊肉泡[食莫]が名物だ。
発酵させずに焼いたかたいパンを小さく小さく手でちぎって
春雨入りの羊肉スープに浸してふやかして食べる料理だ。

場所は老舗の同盛祥。
濃厚なスープが自慢の同店の羊肉泡[食莫]は、
今年国の無形文化財に指定されたというから驚きだ。

羊肉泡[食莫]で使われるパンは、[食莫](mo2)と呼ばれる平たいもの。
P1110751.jpg

ちなみに泡(pao4)はこの場合文字通りの「泡」ではなく、「浸す」という意味だ。
[食莫](mo2)を「泡」するから、「泡[食莫]」。
これがご飯になると、「泡飯(pao4fa4)」となる。
雑炊のことだ。

平たくてかたい[食莫]をしげしげと見つめていたら、
「これは“死麺(si3mian4)”なんですよ。」
出張のコーディネーターとして同行していた中国人のYさんが教えてくれた。
「発酵させてないってことです。」
なるほど、それで「死」ね。
発酵させたものは、「活麺(huo2mian4)」だ。
「麺(mian4)」はこの場合日本で言う細長い麺ではなくて、
小麦粉を練って作った食品全般を指す。

[食莫](mo2)は「死麺」、つまり酵母を使わない無発酵パン。
小麦の発祥地メソポタミアの人々は、
小麦粉と水を混ぜたものをそのまま焼いて食べていたというから、
このタイプのものがパンの原型ということになる。
今のような発酵させて焼くふっくらパンは、
メソポタミアからエジプトに伝わった後の偶然の産物。
無発酵パンをたまたま放置していたら酵母菌で発酵してふくらみ、
それを焼いてみたらおいしかったとさ、ということなんだそうだ。

でもって、平らな形の無発酵パンのほうは、
インドやイラン、イラクなどで今も変わらず食べられているという。
インドのチャパティはこの系譜に入るんだって。
[食莫]も、メソポタミアからはるばる西安まで伝わってきたのかもなあ。

さて、羊肉泡[食莫]を頼むと、
最初にこの山盛りの[食莫]と空のどんぶりが運ばれてくる。
羊肉泡[食莫]にありつきたければ、まずは一仕事。
[食莫]をちぎって自分のどんぶりに入れるのだ。
分量は自分のお腹具合と相談で。

ただ、出来るだけ細かくちぎるのがコツ。
細かくちぎればちぎるほど、後から注ぐスープがよくしみる。
さあ、ちぎって!ちぎって!
P1110752.jpg

周りのテーブルを見渡すと、
テーブルに置かれた[食莫]を前にみんなせっせとちぎっている。
あーだこーだとおしゃべりしながら、手だけは休むことなく動き続ける。
みんな慣れたものだ。
共通の目的に向かってみんなで作業をしている時って、妙な連帯感が生まれる。
例えそれが羊肉泡[食莫]を食べるという卑近な目的であっても。
これも一つのコミュニケーション?
羊肉泡[食莫]が人気の秘密も、案外こんなところにあるのかもしれない。

さて、せっせとちぎった[食莫]入りのどんぶりは、
この後いったん厨房に引き上げられてしまう。
春雨入りの羊肉スープを注ぐためだ。

え?どれが自分のどんぶりか分からなくなる?
ご安心を。
店員さんがどんぶり一つ一つに番号をつけてくれる。
どんぶりを回収する時に番号を教えてくれるので、
それを覚えておけば間違いはないという訳だ。
・・・たぶん、ね。

ちなみに、留学時代に中国語の先生につれていってもらった鼓楼近くのお店では
番号札制になっていた。

さて、羊肉泡[食莫]にはいろいろ薬味がついてくる。

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香菜、唐辛子ダレ、そして糖蒜(tang2suan4)。
糖蒜(tang2suan4)はニンニクの砂糖漬け。
ほとんどニンニク臭さはなく、ラッキョウみたいな感じでなかなか美味。

これは薬味じゃないけど、インパクト大だった唐辛子ピクルス。
P1110753.jpg

見た目ほどは辛くない。

そうこうしているうちに、マイどんぶりが帰ってきた。

P1110756.jpg

おお、ふやけてる、ふやけてる。
濃厚な羊肉スープがしみしみ。
一所懸命にちぎった甲斐があったというものだ。
努力の成果を美味で味わうなんて、なんて直接的なごほうび。

お酢をたらし、薬味を入れてカスタマイズ。
こくのある羊肉スープと黒酢の爽やかさがいいバランスになった。

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しかしこれ、いくら食べても減らない。
[食莫]がスープを吸ってどんどんふくらんでいってしまうのだ。
食べる速度がふくらむ速度に追いつかない。

やっとのことでなんとか一杯たいらげたのはいいが、
後でその無理を悔やんだ。
がっちり固く焼き上げられた[食莫]は、
お腹の中でもまだまだ嵩を増やし続け、
時間がたてばたつほどお腹が張ってしまったのだった。

ところで、中国国際放送局ホームページの紹介記事によると、
羊肉泡[食莫]の起源には宋の初代皇帝、
趙匡胤にまつわる物語が伝わっているという。

▼中国国際放送局の紹介記事:
西安名物「羊肉泡モオ」を楽しもう

---<以下、引用>---

 今からおよそ1000年前、のちに宋の初代皇帝となる趙匡胤(キョウイン)という人物がいました。実家は貧しく、長安(今の西安)の町で浮浪者のような生活を送っていました。ある日、趙匡胤はひもじさのあまりポケットを探りましたが、出てきたのは乾いてカチカチになった饅頭2つ。しかも、水がないので喉につっかえて、なかなか飲み込むことができません。これを見ていた肉屋の主人は趙匡胤を哀れに思い、店で作っていた羊肉のスープを一杯、趙匡胤に手渡しました。趙匡胤は饅頭をちぎって、このスープにひたして食べました。すると、饅頭がスープを吸収し軟らかくなっただけでなく、体が温まり、胃袋がすっかり満たされたのです。
 10年後、趙匡胤は宋の初代皇帝となりました。ある日、趙匡胤はかつて自分を助けてくれた肉屋の前を通りかかりました。10年前の記憶がすぐによみがえりました。店の主人は趙匡胤を見つけると、昔をなつかしんで、ちぎった饅頭をひたした羊のスープを出してくれました。趙匡胤は喜んで、店の主人に金品を与えたといいます。
 のちに、この料理は饅頭ではなく、「モオ」という小麦粉で作ったナンのようなものを入れるようになり、改良されました。こうして、「羊肉泡モオ」は生まれたのです。
 この料理は庶民の間ですぐに広まり、1000年が経った今も、西安の名物であり続けています。


---<引用終わり>---

貧民出身の趙匡胤は、
食べ物の起源に関する言い伝えによく登場するように思う。
「貧民出身」というところが物語性を感じさせるのだろう。
清代に広まった食べ物には西太后に関するエピソードが多いが、
これも西太后という稀代の人物にエピソード自体が吸い寄せられた感が強い。

私自身は、羊肉泡[食莫]の趙匡胤起源説は「出来すぎている」と思っている。
発酵させて蒸す饅頭(man2tou)から、
無発酵の[食莫]に戻るところなんかも、どうもしっくりこない。

それよりは、羊肉泡[食莫]を食べながらYさんが話してくれた説に一票を投じたい。
Yさんの解説はこうだ。

昔、シルクロードを旅する商人たちは無発酵の平焼きパンを「行糧」として持ち歩き、
(ちょっと『指輪物語』の「レンバス」を思い出した。余談。)
行く先々でスープやお湯に浸して食べたのだそうだ。

「もどして食べる」感覚だ。
いわば、インスタント食品の走りみたいなものだったってことだろうか。
長旅の友という訳だ。

宋の初代皇帝にまつわる物語も歴史ロマンを感じさせるが、
シルクロードの起点であり終点であった長安にメソポタミア発祥の食品が伝わり、
それが今も食べ続けられているというほうがもっと壮大で楽しいと思うのだが、
さて、どうだろう。


■お店情報
同盛祥
鐘鼓楼広場西大街3号
029-8721-7512
*鐘楼にある餃子宴で有名な徳発長のすぐ隣にあります。


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おはようございます
おはようございます^^

はじめまして、ブログランキングから
遊びに来ました。

プロの中華料理人が教える
家庭的なヘルシーレシピのブログを
書いている飯村と申します。

応援してかりますね。

またきます。


さとる


2008/10/11(土) 07:47 | URL | プロの中華料理人が教える家庭的なヘルシーレシピ #LkZag.iM[ 編集]
飯村さんへ
ご覧いただいてありがとうございます。
私はただ食い散らかしているだけなので、レシピの参考になりますかどうか。
本場の中華の生レポートとして読んでいただければと思います。
また遊びにいらしてくださいね。
2008/10/14(火) 12:05 | URL | ayazi #-[ 編集]
羊肉泡モーうらやましー
はじめまして。「北京で満福」読みました。餃子を粉の目方でオーダーする話など、「そうだったのか」とひざを打ちました。中国へいってもフカひれや燕の巣ではない普通の料理においしさを感じるので、地方料理をはじめいつも楽しみに読んでます。ついに私の好きな羊肉泡モー登場!おいしそーでうらやましー。私もあれは旅の商人のキャラバン食ではないかと思います。日本ではめったに食べられないのが悲しい。
2008/10/15(水) 19:41 | URL | ronron #-[ 編集]
ronronさんへ
はじめまして。
拙著をお読みいただき、ありがとうございます!
普通の料理を堪能していただける助けになれば、とてもうれしく思います。
さて、羊肉泡モーがお好きなのですね!
同盛祥のものは確かにスープが濃厚でおいしかったです。
でもちょっと上品すぎたかも。
そこら辺の道ばたのお店のものも味わってみたかったです。
「旅の商人のキャラバン食」、そのほうが断然、ありそうですよね。
2008/10/16(木) 18:25 | URL | ayazi #-[ 編集]
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